人工生物圏の世界観
人工生物圏研究所としてイメージする「人工生物圏」を取り巻く世界観を図にしてみました。
人工生物圏を取り巻く世界を大きくは、宇宙、地球、人類の3つに分けました。
宇宙は、質量、時間、座標等の物理法則の諸原則を有し、地球及び人類を内包しつつ、生物圏に重要な太陽エネルギーを提供してくれます。
地球は、大気圏、水圏、岩石圏等の資源から、生物がおりなす適者生存や生物圏としてのモデルを提供してくれます。
人類は、言葉を持ち、世界に意味を持たせ、他生物とは一線を画する社会性によって文化を築きました。そして、道具等の資源だけでなく、理論や倫理、思想など、目に見えない頭の中の資源を提供します。
これらを利用し、地球と人類の交わるところに生じる「人類の持続可能な生命活動の現場」を人工生物圏としました。
人工生物圏では、人類の持ち込む理論及び道具と、地球の自然界から持ち込む生物及び非生物的資源の再配置によって、一定の空間に生態系を築くことになります。人類側の主観でもって組み立てる人工生物圏では、人類そのものが環境であり管理者となります。しかし、その良否は、自然界が持つ絶対的なルールの前に、無慈悲に判定されると考えています。
そこにヒエラルキーがあるとするなら、宇宙>地球>人類となるでしょう。
人工生物圏の管理者である人類は、グリム童話の『死神の使いたち』ではないですが、人工生物圏からのシグナルを真摯に受け取る必要があります。環境維持のため、人類の生み出す「モノ」を選定・選択し、これを駆使して調整や軌道修正を行わなければならないのです。
*しばし多様している”「モノ」”は、人の生み出す道具等の物質から、理論等の非物質も含む意味としています。
キーワードは「モノ」の評価
現時点の私の考えとしては、「モノ」の評価こそが、人工生物圏を構築する上で最も欠かせないキーワードになると考えています。
人工生物圏の長期的な永続性を構築するためには、システムを構成する材料その「モノ」が、そもそも永続的に利用可能なものでなければならないからです。
しかしながら、この「モノ」というキーワードほど可視化し、どう評価すべきなのか難しいものはないとも考えています。
「モノ」の環境的、科学的評価をどう行うべきなのかは勿論。そこには経済的、社会的、政治的な問題から個々人の価値観に至るまであらゆる視点からの評価が複雑に絡んでいると予想されるからです。正直、そもそも答えが出せないのではないかと危惧しているほどです。
しかも、私自身が、この評価に関しては現時点でかなりのド素人で無知なわけです。
しかし、SDGsなど、今後全人類が地球上で持続的に生存するための目標を達成させるためにも、この視点は必要ではないかとも考えています。
私の人工生物圏研究所としての個人的な活動の動機は、そもそも趣味・嗜好によるものであり、循環システムを考えることが好きなだけだったのですが、これを突き詰めていこうとすると、システムを構築する際に使用するあらゆる「モノ」そのもののバックグラウンドの見えなさに愕然としたのでした。
例えば構築した循環システム内で生態系を築き、生物生産を継続して行えるようになったとするならば、それで一つのシステムが完成したことを意味します。しかし、その一方でシステム構成するために外部から持ち込んだ材料そのものの環境的、社会的な持続性に問題はないのか?そこにもっと意識を向ける必要があるのではないか?とも考えるようになりました。
外部は複雑です。そもそもGDP世界第3位(2021年現在)の経済大国を誇る我が国日本などは、グローバル経済の勝者側ですし、世界中の主要品目の殆どを、比較的容易に手に入れることが可能な国でもあります。しかし、その恩恵を受けている一方で、分業・専業化される現代社会から手にする財やサービスを産み出す構造は複雑性を極めており、その本質と素顔(問題性)は、見ようとしても簡単に見えるようなものではないと思われます。
また、勝者がいれば敗者がいます。割を食わされる敗者の素顔もまた、複雑性の陰に隠されているのが常ではないでしょうか。
私自身の選択が、知らずして、非持続的で重大な遺恨を残すような敗者を生み出しているのではないか…
一介の市民にはどうしようもないレベルの社会的な構造上の問題とも言えます。ましてや、世界から見れば物質的にも豊かな生活が出来ているであろう私などは、容易に変えられない日常の中で、日々その恩恵を受ける側であり、安易に問題視して否定するのはおこがましいともいえます。
しかし、一方で、意識せず、知ろうともせず、何も行動しないのであれば、「パンがなければお菓子を食べればいいじゃない」で有名なマリーアントワネット(本人が行ったかどうかは不明ですが)と本質的に変わらないのではないかと思う自分が顔をのぞかせてきました。
この問いへの解を見たい。これも人工生物圏研究の動機に繋がります。
というような、まだまだ荒削りな思想(妄想?)のままですが、「人工生物圏研究所」として活動をスタートさせることにしました。
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