前回の記事の続きとなりますが、2021年の冬越し中の失敗(メダカを失う)を切っ掛けに、やってみたいと考えていた淡水ビオトープのモナコ式的な改良を、2022年5月10日に行うことにしました。
ここでは、その改良内容と現状についてご紹介します。
モナコ式的改良に求めるメリット
モナコ式のメリットは、水槽の底砂内で発生する無酸素領域(嫌気的環境)の有効利用です。バクテリアによる脱窒による還元作用で、水槽内に蓄積する硝酸(NO3)を窒素(N)ガスに変えて減少させることができます。
これまで行ってきた淡水ビオトープ水槽ですが、この2年間硝酸の蓄積は確認できませんでした。正直なところ、モナコ式にせずとも水質を十分に維持出てきているのです。
これは、魚やエビなどが排出する窒素分(アンモニア)やリンを、水草などの植物が吸収してくれているからだろうことは容易に想像が付きます。
ではなぜ、モナコ式をしようとするのか?
一つは、ビオトープとモナコ式の比較により、その能力に差がでるのかを見てみたいと考えています。正直な話し、構造として構築するのであればビオトープの方がモナコ式に比べて簡単です。モナコ式では、水槽へ底砂を敷き詰める前に、水槽底部に水以外の何もないプレナム層と呼ばれる中空空間を構築しなければならないからです。
ビオトープ式で半永久的に無換水水槽を構築できるのであればこれに勝るものはありません。
その一方で、モナコ式の可能性として、このプレナム層の効果を検証したいと考えています。
プレナム層があることで底部の物質や酸化還元電位が平均化し、生体にとって猛毒である硫化水素の発生を抑えることが出来ると云われています。
そのため、長期的な育成を続けた場合、モナコ式の方が水質の維持能力が高く、育成密度も増やせる可能性があります。
今後は、これを観察していきたいと考えています。
改良の為の材料と方法
材料
容易した材料は次の3品です。100円ショップで購入しました。3番目の黒色のザルについては、モナコ式のためでは無く睡蓮の植え替えようです。
加工処理
まずは、①卓上水切りの加工です。海水の無換水水槽でも使用しましたが、プレナム層として使用します。元々の厚みが5cmあり、厚みを2cm程度にしたいためノコギリでカットしました。
次に、睡蓮を植え用に用意したザルも、縁周りが邪魔であるためノコギリで切り落として加工しました。
組み立て
卓上水切りは、厚みを2cmに落とすために、強度に関わる縁の部分を切り落としたため、支えとしての小石をセットします。
加工した卓上水切りをセットします。
プレナム層への底砂の侵入を抑えるために鉢底ネットを敷きます。
多孔質な溶岩石の砂利である富士砂を敷き詰め、睡蓮植え替え用のザル、余分な根を切り落とし、泥を洗い落とした睡蓮の株をセットしていきます。
最後に、これまで使用していたブラックソイルを睡蓮のザルへ入れて根を覆い、残りは、再び底砂として、富士砂の上から、暑さ2cm程度で敷き詰めました。
最後にウィローモスを入れて完成です。
睡蓮の移し替えについて
なお、去年から育てていた温帯睡蓮は、購入時のポットのまま水槽へ突っ込んでいました。根がポットを突き抜け、底砂のブラックソイルの隅々にまで根を這わせていたのには驚きました。
植え替えるに当たっては根が余りにも多いので、泥を全て洗い流し、収まるように切り落とすことにしました。
元々の泥を全て洗い流すことや、根を切り落とすことには抵抗がありましたが、泥は通水性が悪そうで、内部も嫌気で黒ずんでいましたし、根も伸び放題であったため実行しました。
結果的には、ブラックソイル内で定着してくれて、初めての花を咲かせてくれたので結果的にはよかったです。
改良後の現状
生存中の生物
動物では、エビ類と貝類ですが、冬場にメダカが1匹だけになったためか、ミナミヌマエビとヨコエビが異常に増殖していました。
今は、1匹だけ残ったメダカを隣の白の睡蓮鉢へ移動させ、エビと貝類だけになっています。
なお、後に再びメダカを入れる予定です。現在、ベランダにてプラケースを使用し、メダカを卵から育てている所です。
植物は、温帯睡蓮とウィローモスを残しました。オオカナダモは増え過ぎて見た目にもごちゃごちゃしてしまうため、別に移すことにしました。
水質環境
これまで約2年間使用してきたブラックソイルをそのまま使用しているためか、水質は至って良好です。
検出限界以下だった項目: NH4(アンモニア)=Under(0.5㎎/L以下)、NO2(亜硝酸)=Under(0.5㎎/L以下)、NO3(硝酸)=0mg/L(10㎎/L以下)、PO4(リン酸)=0mg/L(0.1㎎/L以下)
今後、メダカを入れるなどして負荷を増やしながらどの様に影響するのか追っていきたいと考えています。
おわりに
今後も注目していく一番のポイントは水質の維持機能です。
また、今後より注目していきたいと感じているのは、生物群の自動的な密度調節機能です。
水槽内で異常増殖していくイメージでしたエビ類や貝類も、ある程度増えれば自動的に落ち着いているように感じるところがあり、ある程度取り除いて(おすそ分けしたり)数を減らせばまた増え、また一定数で落ちつく印象です。
仮に密度を調節(抑圧?)する機能が水槽内で構築されているとした場合、これが何を要因にして引き起こされているのか気になるところです。水槽のスペース、餌の量、酸素濃度...色々あると思います。淡水魚は、水1Lに対して魚1匹などの話もありますが、機械なしで、生物群の育成密度をどこまで高めることができるのかなど、分かってくれば面白いなと考えている所です。
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