ミミズコンポストを起点に人工生物圏の循環を考える~陸から海、海から陸への循環~

MBS

ベランダで作る最小の生物圏(Minimamu Biosphere System:MBS)に海水水槽を用意しました。これにより、淡水と海水の水圏が構築、陸、川(湖)、海と主要な生物圏を揃えることができました。

その上で、これらをどの様に繋げて循環機構を構築していくかが課題となっています。

現在行っている取り組みについて、その概要を紹介します。

循環を考える

人工生物圏の構築をおこなう上でのメインテーマは、”循環”です。生物圏は、生物が生活出来る環境であり空間です。そして生物圏であるためには、エネルギーや物質が絶えず流れ、通過し続けなければ成り立ちません。

これを考えるとき、福岡伸一氏の提唱する「動的平衡」による生命観を想わずにはいられなくなります。

生物は、その個体の外観だけを見ていると、昨日も今日も明後日も変わらず、常に同じ姿で存在しているように見えます。生物を構成する遺伝子や細胞という要素としてのモノ自体が生命の本質であるように見えます。

一方、生物の内部、ミクロな世界では、代謝による自己破壊と再生が繰り返されています。体外から取り込まれた物質は、体内を通過する過程で、体を構成する古い物質と絶えず置換され変化しています。

生物が”生きている”という命を宿すためには、過去、現在、未来において、絶えず材料を変え続けなければならないという、流れが必要だということになります。

つまり、生命であることの本質とは、遺伝子や細胞などといった要素としてのモノにあるのではなく、モノとモノのあいだの働き、流れ、システムなどのコトにあることを意味し、生命の本質を動的平衡としています。

そんな動的平衡なシステムによって生命を宿すことが出来る生物は、多種多様な生物の相互作用の総体によって生態系を形成しています。また、これを成り立たせている舞台が生物圏ということになります。であるならば、生物圏として生命を存続させ続けるためには、生物が利用できる形態でもって、エネルギーや物質が生物圏内を動的に通過し続けなければならなことになります。

当然ながら、エネルギーも物質も、上流から下流へと水が流れるがままに使い続ければ、いずれは枯渇します。だからこそ、流れ下った先の海より、蒸発した水が雨となって再び山に降り注いで川を流れるように様に、”循環”機能を持たせる必要があり、地球はこれを何億年と続けていることになります。

人工生物圏におてもこの循環をどこまで再現できるのかがシステムとしての完成度を高さを評価する指標になると考えています。

そこで、ベランダの人工生物圏(MBS)において出揃った陸、川、海の生物圏の循環システム構築に取り組んでいくことにしました。

では、MBS内で何を循環させていくのか?そしてどこまで循環出来て、どこから出来ないのか?

これを見極めていくためのスタートラインにやっと立った所なのです。

水の循環

まずは、水の循環についての取り組みです。

地球上では、水の固体・液体・気体の3つの状態によって、エネルギーや物質が陸、川、海をダイナミックに流動し循環し続けています。

MBSでも、まず課題になるのはこの水の流れになります。

しかしながら、MBSの物体は屋外のベランダであり解放系であるため、蒸発していく水の回収は出来ません。そのため、水の循環を考えた場合、液体の循環みが可能となり、蒸発分は、ベランダ以外から確保し、給水する必要があります。

蒸発分は、水道水からの給水となっています。

では、MBS内での液体としての水の循環をどうしていくのか?当初は、陸圏と淡水水圏をポンプを使って循環させるアクアポニックス的な循環を考えていました。

水圏接続循環型の菜園付属ミミズコンポストイメージ図

しかし、現状としては、手動による循環にとどめることにしました。循環ポンプの設置が遅れたというのもあるのですが、機械的に水の流れなくてもタナゴやエビなどの育成が可能だったためです。

また、実際に育成を続けていく中で、上段にミミズコンポストを設置し、上段で育てている植物に水を与える中で、下段の淡水圏に流れていく水には、リン(リン酸)や窒素(硝酸)成分が含まれていることが分かりました。

菜園附属ミミコン連動型の淡水水圏

結果的に、ミミズコンポストと連結させている淡水水槽内には、リン酸が5mg/L前後、硝酸が50

mg/L前後で検出されるようになりました。

水槽の栄養で植物を育てるアクアポニックスの真逆のような結果です(笑)

そこで、この水を他のプランターや水槽へ給水することにしました。まさに、自然界の陸から川、そして海へのイメージです。

結果的に、水道水をジョウロに給水→陸圏プランターへ散水→余剰の水分が淡水水圏へ→容器ですくって再び他の陸圏や海水水圏へ注ぐという手動による流れとしました。

淡水水圏に流れる陸圏の栄養を再び陸圏に戻しながら植物を育てるイメージです。

規模が小さいので手動で十分成り立ちます。この作業は、朝のみの日課です。

陸圏と淡水水圏を液体として循環しつつ海水水圏へと一方通行的な水の流れがあり、最終地点として、蒸発によってベランダ外へ霧散していくことになります。

淡水水圏の水質を観察しつつ、特に陸圏で栽培している野菜などに水圏からの栄養が効果を発揮していくのか効果を見ていきたいと考えています。

なお、淡水水圏には、石灰石由来のカルシウムを多く含む水もあります。例えば、昨年見られたようなトマトの尻ぐされ病防止の効果など期待しているところです。

生物による循環

機械による水の循環から意識が離れることで、他の物質循環に気が付くようになりました。

そんな中で実施しているのが生物による物質移動です。食物連鎖を半人為的に起こす方法です。。。

植物

 まずは、植物です。過去の記事でも何度か触れていますが、淡水水圏で増えた植物を陸圏へ戻す方法で栄養移動を行っています。

浮き草や水草です。

確実に栄養移動が出来ますし、表土の乾燥を防ぐマルチングとしても効果があります。

また、今後は、海水水圏で増える海藻などをどうにか陸圏へと与えられないかと検討しているところです。塩分とう問題を解決しなければなりませんが、実現させたいところです。

主にミミズコンポストの餌場内で増えるミミズ以外の生物を水圏生物の餌とする方法です。

淡水水圏の生物より、特にメダカに人気なのが、森のプランクトンとも呼ばれるトビムシです。明け方のミミズコンポスト餌場の蓋を開くと蓋の裏に数十匹単位で張り付いており、これを水面に振り落として水圏生物に与えています。特にメダカの食いつきが良く、配合飼料のみを与えているよりも成長が早い印象です。

また、最近驚いたのがナメクジです。これもトビムシ同様に明け方のミミズコンポスト餌場の蓋を開いた際の蓋裏に数匹張り付いていることがあります。これをピンセットでつまんで海水水圏に与えてあげるとイソスジエビが喜んで食べに来ることを発見しました。

ナメクジを食べたのは驚きで、水槽に入れた途端、エビが騒ぎ出し探し出します。厚い皮膚を持たないナメクジだからこそ、海水に入れられることで浸透圧の関係によって体液が海水へと漏れ、エビがよってくるのかもしれません。

ミミズコンポストが起点に

1stシーズンは、ミミズコンポスト作りと野菜を育てることがメインでしたが、2ndシーズンからは、人工生物圏の醍醐味と考えている循環に目を向けて、色々と試していきたいと考えています。

なお、設備的にはできるだけ、機械などを入れずに簡易的で簡素な方法によって行っていきたいと考えています。

当初は、見栄え良く、上記の図のようにポンプを設置した陸圏と水圏の循環などを行いたいと考えていましたが、これらに頼らずに何処まで出来るのか見てみたい気持ちの方が大きくなっている状況です。

またこれにより、工夫の幅も広がるため、機械が無い中で色々と思索出来るのは中々楽しめている所です。

そんな中で、現在実行している循環がミミズコンポストを起点に行われていることに気が付きました。

ミミズコンポストには、ベランダ外の家庭内で出てくる生ごみという資源が供給されます。ベランダ外から供給される生ごみを栄養資源とし、ベランダ内の各生物圏を廻って有用に利用され、最終的に収穫物としてベランダ外の家庭の食卓へと運べるのかが、MBS構築の上で重要なキーポイントになりそうです。

コメント

タイトルとURLをコピーしました