モナコ式水槽の育成結果〜水質環境編〜

無換水モナコ式水槽の水質環境 海水水圏

前回のモナコ式の水槽作りに続いて、ここでは、モナコ式にて実際に育成を行った2019年9月28日~2020年8月4日までの水質環境について、結果をご紹介したいと思います。

測定項目及び試薬

育成を行いながら、徐々に測定出来る項目を増やし、全部で7項目の測定を行いました。測定に使用した試薬は、全てアクアリム用の比較的安価な簡易測定試薬です。

アンモニア(NH4/NH3)

主に生体からの排泄物から発生します。pH7以上の時にアンモニウム(NH4)から変化してできるアンモニア(NH3)は、生体にとって非常に有毒です。

試薬製品:(株)セラジャパン NH4/NH3-Test(検出下限値:0.5mg/L)

亜硝酸(NO2)

主に、硝化細菌の働きによってアンモニアから亜硝酸(NO2)が作られます。毒性が高いため、アンモニアと同様に注意が必要です。

試薬製品:テトラジャパン(株) テスト試験紙NO2 (検出下限値:0.5mg/L)

硝酸(NO3)

硝化細菌の働きによって亜硝酸から硝酸が作られます。アンモニアや亜硝酸に比べると毒性は低いですが、蓄積しすぎると有毒です。一般的な好気的濾過を行うアクアリウムなどでは蓄積する要素です。

試薬製品:テトラジャパン(株) テスト試験紙NO3 (検出下限値:10mg/L)

リン酸(PO4)

餌由来で水槽内に蓄積します。藻類が蔓延る原因になり、蓄積しすぎると生体にとって悪影響を及ぼします。

試薬:(株)セラジャパン PO4-Test(検出下限値:0.1mg/L)

カルシウム(Ca)

海藻やサンゴなどの無脊椎動物を健康的に育成するためには、約400~450mg/Lが推奨されています。

試薬:セラジャパン Ca-Test(検出下限値:0.25mg/L)

pH

pH値は7を中性として、海水魚は8.1(7.8~8.3)の弱アルカリ性にて管理する必要があります。

試薬製品:テトラジャパン(株) テスト試験紙 pH

炭酸塩硬度(KH)

KHとpHは、相互依存の関係があります。KHが高いほど、水はアルカリ性になりやすく、pH値も高くなりいます。また、KHが高いと緩衝作用によって酸性になりにくくなります。KHが低いと水は酸性になりやすくなるため不安定になります。pH値の急激な低下は、生体にとって非常に危険な環境となります。

試薬: (株)セラジャパン 炭酸塩硬度 KH

水質の管理結果

測定結果は、グラフの通りです。

なお水温は、22~28℃管理、塩分(比重)は1.022で管理していました。

硝化細菌及び脱窒菌の働きを確認

三態窒素であるNH4、NO2、NO3より、NH4及びNO2は一度も検出されませんでした。

NO3については、ライブロックを投入した翌日に0-10㎎/Lの範囲内で少量を確認して以来、その後は一度も検出されませんでした。

その後、NO3が一度も検出されなかったことから、モナコ式水槽の醍醐味でもある嫌気層やライブロック内部、藻類の吸収によって脱窒が働いていたと考えられました。

リン酸も未検出

リン酸につても、育成を通して一度も検出されませんでした。海藻やサンゴ働きによって、吸収されたと考えています。

カルシウムの増加

Caについても減ることなく、予想に反して増加しましま。生体による吸収スピードよりも、サンゴ砂などからの溶出スピードの方が優っていたようです。

pHとKHは一定値にて安定

pHについては、試薬の測定値7.3〜7.8の間の色合いで変わりありませんでした。グラフ上は平均値として7.5にて表しました。低いように見えますが、汲みたての天然海水と同数値で変わりありませんでした。天然海水が8以下に下回ることはないと思われますので、入手した簡易測定試薬が実際よりも低めに出るようになっていたのではないかと考えられました。

KHについても7dHにて一定でした。これも低いように見えますが、汲みたての海水も同数値でしたので、試薬の能力によるところだと思われました。

水質環境の評価

以上の結果より、水質環境については、申し分ない管理が出来たと考えています。

正直、機械的な浄化設備などを導入せずに、三態窒素やリン酸が検出下限値を示して検出されず、pHも一定して安定管理出来たことには純粋に驚きました。

なお、育成水の黄ばみの発生具合については、多少感じられるほどに黄ばんで見えてはいましたが、写真に残せるほどの色合いではありませんでした。次の写真は育成収量前の写真ですが、黄ばみは感じられません。

また、硫化水槽の発生については、10ヵ月の育成期間内で致命的な問題になる状態は発生しませんでした。

以上より、水質環境そのものに問題は感じられませんでしたが、藻類等の盛衰など視認できる環境変化については様々見られました。詳細は、記事を分けてご紹介させていただきます。

コメント

タイトルとURLをコピーしました