「一から作ろう」
「やってみたかった陸上養殖を形にしてみないか?」そんな言葉を、モンゴルで共に仕事をさせていただいた方から頂きました。
当時、陸上養殖施設の運営に苦戦し、「あれはどうだろうか?」「これはどうだろうか?」と散々語り明かしてきた方からのオファーでした。
そこに新たな仲間も加えてチームで一から技術開発をしようとの誘いでした。
最後の挑戦になるかもしれない。。。
今までの全てを掛ける気持ちで再集結ことにしました。
まずはプロトタイプから
水産養殖において最も大事なことは、対象となる生き物をどれだけ熟知するかにあることだと思います。その上で、陸上養殖を行っていく上で欠かせないことは次の3点だと考えています。
①どこまで高密度で早く、沢山育てられるのか?
②対象種に合わせた最適な育成環境はなにか?
③水質浄化のための最適な浄化設備
①は、生産性と事業性を検討する上で最も重要になります。m3又はm2当たりで何kg又は何匹育成出来るかを試算できなければなりません。
②は①を最大化させるために重要な要素となります。育てたい生物がどのような環境で最も多く育成出来、生産量を高められるのか?水槽の形状や水流、時には隠れ家的な構造物など、育てる生物によって用意すべき条件はことなります。
そして③は循環式養殖を成功させるために何よりも重要なファクターだと考えています。生き物を育てるには、当然食べ物が必要ですし、食べた分の排泄物を出すため育成水を汚すことになります。その汚れた水を浄化して再利用することこそが循環式養殖の根幹になります。
そこで、プロトタイプに何よりも求めた機能は、余力のある浄化能力です。循環システムの核となる設備になるため、どのような資材(濾材等)を選ぶのかが問われます。
余力のある浄化能力を確保することで、対象生物の生産限界を把握することが出来、実際の事業性も評価できると考えました。
プロトタイプの設計
今回の循環式陸上養殖は通称RAS(Recirculating Aquaculture Systems)と呼ばれる循環式の陸上養殖システムで、浄化方法の核となるのが微生物による浄化を利用した生物濾過槽になります。
その上で、プロトタイプの設計では、主に次の項目を試算することで構想を練っていきました。
①水槽の面積と水量
②対象生体の決定と生産目標及び負荷量(排泄物由来のアンモニア等)
③負荷量を考慮した浄化設備(生物浄化槽)の決定
④循環回数の決定(水質を考慮した回転数)
⑤循環回数に対するポンプや配管等の選定
今回の設計では、対象生体の装置される高密度育成にも耐えられる浄化設備とし、浄化設備のために選定した資材の能力評価をすることにしました。
同時に、高密度育成を限界まで続けることで、対象生体の育成限界密度を把握していきたいと考えました。
今日までの状況
2024年8月頃からプロトタイプの設計を開始。育成対象種はバナメイエビとしました。
2024年の11月までにはプロトタイプの資材等を集め、試作装置を手作り、実際の育成を始めるまでに、試運転しながら改良を加えていきました。

そして、2025年3月にバナメイエビの稚エビを受け入れ育成を開始し、5月現在も継続して育成を行っている所です。

プロトタイプの組み立ての様子や育成状況を随時発信していきたいと思います。
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