改良型モナコ式水槽の育成状況~育成密度の限界はどこか?~

海水水圏

改良型モナコ式水槽となって、1年10ヶ月が経過したところです。その間、死んだ個体もあれば追加した個体もあるのですが、そもそも濾過装置無し、無換水のままでどこまで育成密度を高めることが出来るのか検証したいと考えていました。

そして、2022年6月5日の段階である限界に近づくことになりました。

これまで、未検出であったNO3(硝酸)やPO4(リン酸)を検出したのです。

改良型モナコ式水槽の水質能力を検証していくためにも重要な局面を迎えることになりました。

そんな、最近の育成状況の実情についてご紹介します。

水質浄化の限界点?

濾過装置なしの無換水管理により、どこまで育成密度を高められるのかについては最も感心があった所です。育成密度の限界点の評価基準として、栄養塩の指標である窒素(硝酸)やリン(リン酸)の検出を指標にしたいと考えていました。

硝酸やリン酸は、主に餌を由来として水槽内へ供給されます。

水槽内の水質浄化能力の範囲内で栄養塩類の負荷を掛ける分には、処理され、蓄積することなく検出されることはありません。

そこで、検出されるレベルまで個体数を徐々に増やし、負荷を掛けていきたいと考えていました。

磯採取で捕まえてきたヤドカリ3匹、エビ2匹、巻き貝1匹を5月28日に追加しました。その結果、シアノバクテリアらしい赤褐色の藻が海藻表面に蔓延るようになり、水槽内に視認可能な変化を確認することになりました。

そこで、水質検査を実施することにしました。

水質検査結果

6月5日行った水質検査にて、これまで未検出であった硝酸やリン酸を検出しました。

検出した項目:
NO3(硝酸)=10mg/L、PO4(リン酸)=1.0mg/L

検出限界以下だった項目:
NH4(アンモニア)=Under(0.5㎎/L以下)、NO2(亜硝酸)=Under(0.5㎎/L以下)

今後は、硝酸やリン酸が蓄積されず、低下していくのかが重要になります。

当然ですが、水槽内の負荷量に対応して浄化に関わる生物も増減を行います。負荷量が少なければ、浄化生物も少ない量となり、負荷量が増えれば、その分増殖ししていきます。

このまま硝酸やリンが蓄積するようであれば、餌はあっても、浄化生物達が増え続けるための空間がないということになり、これが、改良型モナコ式水槽における浄化能力の限界となり、飼育生物にとっての育成密度限界ということになります。

育成密度(個体数)

水質に影響していると考えられるカウント可能な主要な品種は、次の表の通りです。

改良型モナコ式を始めた2020年8月4日を”開始時”、生体の追加を行った最終日である2022年5月28日を境に、追加前を”水質変化前”、水質が変化した追加後を”現在”としました。

※補足・・・なお、例えば、ニチリンダテハゼなどは、開始時から現在まで匹数は「1」と数字上変わりありませんが、一度飛び出し事故などで死なせており、追加してのカウントなっています。
そういった死亡後の追加などについては、いくつかの品種で起こっています。
そんな死亡原因などの内容については、追って記事にしていきたいと考えています。

水質が変化したのは、変化前の主要な総個体を26匹を32匹へ5匹増やした段階です。

品種ごとに環境への負荷レベルは異なるため、合計匹数で育成可能密度を語ることは、あまりにも正確性に欠けるとは考えていますが。これらの種は、人為的に生体数を調節可能な品種になるため、飼育したい生体を品種の分類ごとには何匹まで育成可能なのか目安になると考えています。

一方、生体数が砂利やライブロック内に隠れていたり、コロニー化しているためにカウントが出来ない品種もあります。

そんな品種の中には、開始当初よりも明らかに個体数を増やした品種がいます。サンゴ類とゴカイ類です。

サンゴ類のコロニー増殖は顕著です。育成開始当初はスターポリプ、ウミキノコ、マメスナ、ディスクコーラル(グリーン系)、ディスクコーラル(ブルー系)がいました。

その後、マメスナは海藻に埋もれて消滅してしまいましたが、それ以外のサンゴ達は、倍以上にコロニーを大きくしました。

また、ゴカイ類の増殖も顕著です。砂や岩場、海藻内に潜って触手を伸ばすデトリタス食性のゴカイ類は特に増殖、開始当初は数匹であったと思われますが、現在は少なく見ても50匹以上にまで増殖しています。

その他にも、硬質の筒を築くゴカイや、肉食性のゴカイも数量は不明ですが確実に増えています。

また、カウント不能な種としてヒトデや、小さな巻貝類も見かけます。

それらを総合すると、動物種の生体数は開始当初よりも倍以上に増えている印象があります。

しかしんがら、これらは、カウント不能な種は人為的な調節も難しいと考えているため、濾過装置を使用しない無換水水槽特有の水質維持のための環境と考え、カウント及び調節可能な生体が、どれだけの育成密度(生体数)を維持し、どれほどの期間育成可能なのか観察していきたいところです。

なお、一般的に、海水魚の場合は10Lに対して1匹を目安にするといわれています。

現在使用している飼育水槽は30×30×高さ50㎝の容積45L(魚の遊泳エリアを考えれば約30L)の水槽です。

少なくとも魚は5匹飼育出来、その他の動物も多数育成できていることから、効果な濾過装置を使用せずとも、見応えのある生体数が育成可能であることは良く分かりました。

生態系の総合力

モナコ式における水質の浄化は基本的には、バクテリアなどの細菌類が主役です。しかし、細菌類が浄化能力は、サンゴや海藻から分泌されるワックスなどの多糖類(炭素)でより発揮されるでしょうし、海藻や石灰藻も硝酸やリン酸の利用者として働いています。

餌にしても、魚が食べ残した分は、甲殻類や貝類がすぐに探し出して食べてくれるため、残って腐敗するようなことはまず無いですし、排泄物などの分解においては、ゴカイ類やプランクトン類などが一役買ってくれていると考えています。

現状としては、硝酸がリン酸が検出された分けですが、現時点での水槽内の生物量を見れば、想定していたよりも多く育成できていることに驚いているところです。

結果、生物個体数としては多いわけですが、あくまでも生物多様性による総合力としての育成密度であると言え、生物多様性を構築することで、日々投入される餌由来の負荷を、品種ごとの役割の中で効果的に処理できていることによる結果であり、単品種だけの育成では成立し得ない育成密度であると考えています。

おわりに

とにかく、これからの硝酸やリン酸の動向に注目していきます。仮に蓄積が止まらない場合は生体数を減らすことも考えています。もしくは、自動調節的に個体数が減るのか。。。

しかしながら、高価な濾過設備など使用しなくても、ここまで育成出来ていることには自身驚いているところです。こういった結果を見ているとどうしても養殖への応用などを考えてみたくなるのですが、高密度単種飼いが基本の養殖となると、簡単に描けないところがありますね。。。ですが考えてしまいますね(笑)。

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