無換水水槽への挑戦〜きっかけと主な取り組み〜

無換水水槽内の育成状況 MBS

ベランダで行うMBSとは別に、昨年から挑戦している取り組みがあります。

無換水水槽』です。生き物を育成する水槽の水を一度も取り替えること無く、蒸発で失われた分を給水するだけで長期間管理を行える水槽です。

また、機械的な生物濾過や物理濾過を使用せず、自然の浄化作用だけを頼りに、何処まで水槽内の環境を維持できるのか試しているところです。

既存の呼び方をすれば、『ビオトープ』や『ナチュラルシステム』とも呼ばれる方法です。

無換水水槽は、海水と淡水の両環境で再現を試みています。海水は1年、淡水は1年と2ヶ月が経過したところです。

現状の環境はすこぶる良好で、時間の経過と共に、環境がより安定化し、浄化能力が高まっているのを感じているところです。今後は、この無換水水槽についても記事にしていきたいと考えています。

きっかけ

私の前職は『循環式陸上養殖』の技術開発者でした。

”食糧問題への貢献”が動機であり、生態系のピラミッドからはみ出しているであろう人類を養うためには、その食料も自然から隔離して生産する必要があるのではないかと考え、大好きな水産分野より『循環式陸上養殖』にその可能性を見いだしていました。

循環式陸上養殖は、歴史が浅く、発展途上な分野で前途多難でしたが、『循環式陸上養殖』の技術開発を天職と考え、苦悶しながらも楽しみながら10年走り続けて来ました。

しかし一方では、何かが引っかかり、これを自己消化できずに徐々に煮詰まってきていた自分がいました。

家族ができたことは最も大きな理由ですが、海外出張が長期化した頃から、他国の文化にも深く触れるなかで、自身の生命観、倫理観が刺激を受け、これらがミックスされ、結果やっぱり煮詰まり、一度この業界から離れる決断をすることにしました。

単なる夢想家の類いなのかもしれません。

この業界から離れて、3年は経過したところです。家族との生活を楽しめていることは、何よりも幸いなことですし、その喜びを日々噛みしめているところです。

また、一方で『循環式陸上養殖』を外の世界から冷静に見ることもできるようになってきたのではないかとも感じてもいます。企業は、いくら綺麗事をならべても、その目的は”利潤の最大化”ですし、組織の規律の中で的確に動くことが求められます。そんな中で、自分自身は、視野が狭くなりがちだったと考えています。

今思ってみても、僕のレベルでは、組織の中に踏み留まり続けても「煮詰まる問題」の答えを見出せなかったのではないかと思うところです。

結局は、ガレージレベルの趣味にまで降格させてしまっているわけですが、置かれている状況としては、最大限楽しませてもらっていると考えているところです。

現状を格好良く言うことができるのであれば、業界及び企業に属さない視点から『循環式陸上養殖』の可能性を再構築しているという見方ができるかもしれません。

もちろん、煮詰まっていた答えを完全に消化できているわけではありませんが、答えを探すため、原点に帰る意味から『無換水水槽』に挑戦することにしました。

取り組み中の育成水槽概要

海水水槽~目指すのは『森は海の恋人』~

海水水槽は2種類の方法を試しています。

2019年9月28日から無換水による海水育成を可能にしたナチュラルシステムの代表格『モナコ式』を取り入れた育成を10ヶ月間行い。基本を確認した上で、2020年8月4日から改良型に再構築して育成を継続しています。8月16日現在で1年間は無換水のまま経過しているところです。

モナコ式は、水槽の最下層に水中の物質を拡散させるための遊水層(プレナム)を設け、その上にサンゴ砂を敷き詰め、サンゴ砂に棲息する微生物によって水を浄化し続ける方式です。これにより長期の無換水飼育が可能になったと云われています。

なお、水槽内には、海水アクアリウムでレイアウトや隠れ家として使用するライブロックを使用しており、海藻も群生しています。

ライブロックに棲息する微生物による浄化作用を活用する方式は『ベルリン式』と呼ばれ、増えた海藻を取り除くことで水中の栄養を系外に出す方式を『スミソニアン式』と呼ぶため、気がつけばモナコ式と併せて3つある既存の方式を複合したシステムとなりました。

<水槽のスペック>

  • 水槽:30×30×高さ50cm(有効容積42L)
  • 使用機器:照明用LEDライト、流水ポンプ(エアレーションは塩だれで汚れるため取り外す)、サーモスタット付きヒーター

なお、現在、1年間無換水にて育成を継続している水槽は、 山の土壌が海の生態系を育むという畠山重篤氏の 『森は海の恋人』的理論にヒントを得た改良型です。底砂の材料に変更を加え、再検証することにした育成です。

通常の好気性(酸素を必要とする)微生物を活用した機械式濾過槽であれば蓄積するであろう硝酸(NO3)やリン酸(PO4)は、手持ちの簡易検査キットでは測定限界値以下となり、一度も検出されること無く安定して育成を継続できています。

<現在の生体数の概算>

  • 魚:3種4匹
  • ヤドカリ類:2種3匹
  • 貝類:5種12匹
  • イソギンチャク:2種2匹
  • サンゴ:4種(多数のため計測不可)
  • 海藻:約4種(計測不可)

今後は、生体数の調整等変化を加えて管理していきたいと考えています。

また、底砂の材料についても 試してみたい材料が他にもあるため、他の水槽などで再現できればと考えているところです。

淡水槽~ビオトープから無換水育成の原点を学ぶ~

淡水水槽は、淡水飼育のナチュラルシステムとして一般的になっている『ビオトープ』による育成にトライしました。

こちらは、取り組んでいる方も多くいる方式のため、無換水育成の原点を学ぶために始めました。

2020年6月21日より、屋外にて写真の白い円形の睡蓮鉢(左)から始め、7月10日に黒い円形の睡蓮鉢(右)を追加しました。8月16日現在で1年と2ヶ月が経過しています。

主に、メダカとミナミヌマエビを主体にした水槽です。

また、2020年6月14日より、写真右上の長方形水槽をメダカの稚魚ふ化水槽として増設しました。

<水槽のスペック>

  • 睡蓮鉢:直径44×高さ25cm(容積23L)
  • 長方形発泡鉢:45×30×高さ20cm(容積13L)

水槽の底にはブラックソイルを敷き、水草なども種類を増やしながら育成を継続中です。

現在は、水草などを介して運ばれてきたであろうタニシやヨコエビも自然に増えている状況です。

<主な育成個体の概要>

  • メダカ:3種(睡蓮鉢白:6匹、睡蓮鉢黒:16匹、発砲鉢:睡蓮鉢黒の稚魚他数)
  • ヤマトヌマエビ:(増殖しすぎて計測不可)
  • タニシ:1種(増殖しすぎて計測不可)
  • ヨコエビ:種は不明(数量も増殖しすぎて計測不可)
  • 水草:約6種(数量の計測不可)

海水同様に水質は安定しています。

現状維持のまま、水槽内がどのように変化していくのか観察中です。

その他

ベランダで行うMBSでの無換水水槽作り

ベランダで行うMBSにて構築中の水槽ですが、 比較用の菜園附属ミミコンで取り入れています。

上段に位置する菜園附属ミミコンのプランター底に水が溜まるように改造しつつ、 プランターの水がオーバーフローによって、下段に設置している淡水水圏プランターへ落水する構造になっています。

原案としては図のような構造を考えています。下段の淡水水圏プランターの水をポンプなどで、上段に戻す予定にしていますが、材料検討中でまだ設置はしておりません(笑)。システム構築中の水槽です。

なお、上段とはポンプ接続できていませんが、下段の淡水水圏プランターでは、2021年6月21日より、タナゴと、睡蓮鉢で増殖したミナミヌマエビとヨコエビを投入して育成を始めもした。

睡蓮鉢同様、淡水水圏プランター内だけで水質は安定していますが、いずれ必ず繋げます(笑)。

おわりに

まずは、無換水水槽に挑戦する「きっかけ」と取り組んでいる水槽について概要を紹介いたしました。

今後は、こちらの取り組みについても、状況や構造について紹介していきたいと考えています。

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