土づくりへの考え方
土づくりを行う上で重点においたのは、土の中の特殊な生態系の一つ「根圏」です。
久馬一剛氏著書の『土とは何だろう?』では、「植物の根と土壌との界面のごく薄い、厚さ1mm以下ぐらいの部分を根圏と呼ぶ」とあります。
根圏では、植物がその生育に必要な養分を吸収する場としてだけではなく、根からの分泌物質が土壌に作用して養分を吸収しやすくしたり、微生物の働きによる植物への成長補助や養分固定など、有用な営みが様々に行われる場のようですが、よく分かっていないことも多い領域でもあるようです。
また、根圏の微細なエリアに棲む微生物の種類は、圏外の土壌よりも種類、数共に多いようです。土壌1gに微生物が1億いるということだけでも驚きですが、それよりも多様な世界が根圏だとすると、それだけでも非常に興味をそそられます。
そんな土壌生物達が織りなす微細で多様な生態系は、耕作したり、農薬散布や過剰な追肥などによって容易に乱され、最悪は崩壊してしまうようです。
人が耕すことがないのに、毎年決まった場所で山菜が収穫出来ている状況などは、こういった根圏によるところが大きいのだろうと感じます。
この根圏を生かすの農法の一つとして畑を耕さない不耕起栽培などがある様です。
そこで、人工生物圏を構築していく上でも「土の中の根圏尊重」による土づくりを行いたいと考え、根圏を活かすたなかやすこ氏著書の『自然の力を借りるから失敗しないベランダ寄せ植え菜園』で紹介される土づくりをベースとして不耕起栽培を実践し、根圏を育てるプランター菜園を実践したいと考えました。
教科書通りの土づくり(基本の土)
そもそも、良い土とは何なのか、そしてプランター菜園向きの土の正解が分からないため、なかやすこ氏推奨のココナッツ果実殻から作られた有機用土をベースとしって配合するプランター用の土を基本として、実践することにしました。
たなかやすこ氏の書籍紹介はこちらで記事にしました。『自然の力を借りるから失敗しない ベランダ寄せ植え菜園』寄せ植えと出会い、ベランダ菜園の世界を教えてくれた教科書ベランダ菜園を始めるきっかけを作り、人工生物圏構想をMBS(Minimum Biosphere System)として実践に移す為の多くのヒントを与えてくれた、教科書的な大切な図書です。目次をたどり、まず目を引いたのが、著者が掲げる4つのルールを掲載するPart1のRule2「軽くて何度でも使える土づくり」でした。
基本の土づくりのための材料
1.ココヤシ100%の土「ココピート」
ココナッツ果実の殻を粉砕し、堆積・発酵させた繊維質の土です。もともとは、産廃扱いになっていたココナッツ果実の殻を有機用土として再利用した品です。ココヤシの繊維には無数の穴があり、保水・通気性がよい上にとても軽いことからプランター菜園向けとしても販売されている商品です。
今回は、量を買いたかったので200L(梱包4cu.ft)の商品を購入しました。重量にして25㎏もあるので男の私でも中々に移動がしんどかったです。購入したこちらの商品は、手で簡単に崩れるタイプでした。なお、6L/500gで圧縮個包装された扱いやすいものもあり、水で戻すことで約8倍に膨らむというような商品です。
2.もみ殻燻炭
もみ殻燻炭は、米を収穫して脱穀した後のもみ殻を燻して炭化させた土壌改良材です。水に溶かすとアルカリ性になるため、酸性土壌に混ぜると中和する働きがあります。また、微生物の住家になり、保水性・通気性もよい素材です。
今回は、職場の兼業農家さんH氏に、自家生産しているもみ殻燻炭を頂きました!
3.ミミズの堆肥(市販)
ミミズの堆肥は、ミミズが有機物を分解して作った天然の肥料ですが、まともなミミコンの堆肥が無い状態からのスタートであるため、ミミズが作った有機特殊肥料「みみず太郎100」を使用しました。
こちらは、ミミズのエサ作りから熟成まで約2年かけて作られるミミズの糞の土で、土に混ぜるだけで植物に必要な栄養素が得られ、有用微生物の増殖を促進する商品のようです。
...自分で行うミミズコンポストから出来上がる堆肥もステキに効力を発するには2年は必要とのことでしょうか?
4.元肥(市販)
こちらもミミコンの堆肥や、土壌生態系が熟成した土がなところからのスタートであるため、24種類の微生物が土を元気にするという根菌入りの有機元肥であるプロトリーフ社の「元肥の匠」を使用しました。
プランター土壌における微生物が作る生態系も、最終的にはその土地の環境条件に適した微生物によって形作られるのが理想だと考えています。しかしながら、ゼロからのスタートとなると有害な微生物群が発生してしまう可能性もあるため、有用微生物入りのこちらの商品は有難いと思い使用することにしました。
私自身、陸上養殖に携わってきた経験上からも微生物環境を整えることの重要性については痛感させられる場面が多々ありました。
基本の土の配合比
配合は教科書を参考に以下の通りとなります。
No | 材料名 | 用途 | 使用量 |
1 | ココピート | ベース土 | 15L |
2 | もみ殻燻炭 | 微生物の棲家 | 75g |
3 | ミミズの堆肥 | 植物の肥料 | 250g |
4 | 元肥 | 植物の肥料 | 25g |
使用してみた感想と今後の展開
使用後の感想
作った土の性状は、とても軽くフカフカです。ベランダが日陰がちなためかもしれませんが、水をよく吸って乾燥しにくい感じです。時折、野菜の葉に病気らしき症状が見られることもありますが、収穫まで行うことが出来ていますので、今後、根圏の生態系が整ってくれば、より安定し、生産力も上がるのではないかと期待しています。
なお、今回使用したココピートの保水性の高さのためか、乾燥気味を好むハーブ(今回はフレンチタイム)については根腐れを起こしました。これについては、たなかやすこ氏も著書で紹介しているように軽石を細かく砕いた日向土などで、排水性を高めた土づくりが必要なようです。今後改善していきたいと考えています。
今後の展開
次回の投稿で掲載したいと考えていますが、人工生物圏を構築する上で、地球の環境に近づける意味からも鉱物資源からのミネラル溶出やその性状を生かした土づりも行いたいと考えています。
また、最終的には、住んでいる地域内で容易に手に入る資源だけを使った土づくりにも挑戦したいと考えています。
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